あんまり贅沢すぎて 移住者3名による里の暮らしクロストーク

「やまがた里の暮らし大学校」は、都市と地方の交流がテーマです。ここでは、ひと足早く都市と地方の垣根を軽やかに飛び越えて、里の暮らしを満喫している個性豊かな3名の方にその実感を語っていただきました。

■川西暮らしのきっかけは

―それぞれ川西町に暮らすようになったきっかけを教えてください。

浦田英明さん:
私は17年前に川西町の玉庭に来ました。東京での学生時代に援農サークルに入っていて有機農業の勉強をし、さらにアメリカの農場で修行した後、農家の居候先を探していました。たまたま学生時代にサークルで知り合った高畠町の方を介して知り合った方と一緒に置賜地域での移住先を探して玉庭に決まったんです。
宇野佐知子さん:
私の生まれは東京の小金井市。仏教系の大学を卒業して、曹洞宗の宗派の研究所に入ったところで夫と知り合いました。夫と遠い親戚にあたる川西町のお寺のご住職が、跡継ぎがいないという話になり、声が掛かったのがきっかけです。今年の冬で2年経ちます。夫はまだ東京勤めなのでこちらでは私と3歳の息子との二人暮らしです。
リチャード・チンさん:
20年前、高校を卒業して留学しようと思い、マレーシアではあんまり知られていなかった日本に来ました。東京で日本語の勉強をしているとき、日本には雪が降ることを知って雪国で暮らしてみたいと思ったんです。ちょうどその頃、どこかの駅で蔵王のスキーのポスターを見たんですよ。「あ、ここ雪あるんだ。蔵王ってどこかな」って調べたら山形、じゃあ山形行こうかと。それで山形大学工学部に入学して勉強する

場所として丁度いい川西町フレンドリープラザへ通うようになり、そこで知り合いがたくさん出来たんです。卒業後は会社勤めをして米沢や東京、マレーシアで働いていたんですけど、やっぱり日本に戻りたいと思って川西町の知り合いに相談して4年前に移住してきました。

■川西に求めたもの

―皆さん何を求めて川西町に来たのですか?

リチャード:
雪があるから楽しいかなーって。で、来たら雪だけじゃなく、「これおいしいな」とかたくさんあって。それから「もっと遊びたいな」と思って。とにかく楽しいなって。
浦田:
流浪の民なのね。どっちかっていうと。あっちゃこっちゃアメリカとかいたりして。もともと先祖がずーっと南の方だったりするんだけど、そろそろ安定したいなって。川西町だったら故郷つくれるんじゃないかなって。

宇野:
私は急に決まって、予備知識も何もなく来て、こういう所だって初めて知りました。いずれ夫は山形のどこかのお寺に入るんだろうなあと思っていたので、どこに入ってもいいような気持ちではいましたね。でも私はもともと都会の人混みがあまり得意でなくて、だから田舎に住みたいなとは思っていたんですよ。

―実際に住んでみて、人間関係で以前住んでいたところと違うなあとか感じることってありますか?

宇野:
こっちの人の方がフレンドリーですし、すぐ「お茶飲みなさい」っていうのは東京じゃあり得ない。初対面でも言いますよね。呼ばれれば積極的に行きますね。話をしなければ私も方言を理解出来ないし(笑)

―ところで、皆さんブログでこちらの暮らしについて書いているとのことですが…?

宇野:
私の場合は東京の友達への近況報告とか。田舎の生活のことを書くと友達が結構面白がるんですよ。檀家さんの家へ行って漬物食べたとか、それだけでも喜ぶんです。だから友達に向けて書いてるっていう意識が強いですね。
リチャード:
私はマレーシアの家族とか友達に発信しています。家族は去年、実際に遊びに来たんです。11月のはじめに1週間くらい。紅葉がきれいな時期だったんだけど、去年は雪降って。雪を見ることができたのは嬉しかったんだけど、やっぱり寒い!って。あと印象深いのは食べ物だったようで、姉なんか大根をお土産に持って帰りたいって(笑)。5月に遊びに来た台湾の友達は、山菜がおいしいなあって。

■川西の食のある暮らし

―食べ物のことをもう少し聞かせてください。

宇野:
山菜がそこら辺にあるのに誰も採らないっていうのが、すごい贅沢だなって思いました。庭とかに"ふきのとう"生えてんのに放っとく(笑)。必要な分だけ獲って、食べない分は獲らないということが普通に成り立っている。あと、檀家さんに色々頂くんですけど"まつたけ"とか今年いっぱい獲れたからとか、そういうことってブログに書けないんですよ。あんまり贅沢すぎて(笑)「なんでうちに送ってくれないんだ」とか、たまに怒られるんで。
リチャード:
こっちの食はすごい豊かですよ。"本しめじ"を初めて食べたとき「これだっ!」と思ったもの。あれ食べたら"まつたけ"とか、どうでもいいんだよね(笑)
浦田:
子どもの口が肥えちゃって。面白かったのが玉庭小学校の修学旅行で行った先で食べ放題のそばと米がでたんだって。でも最初一口つけて、誰もおかわりしなかったって…。
リチャード:
そうなんですよ。子どもは意外にさ、大人よりも舌が敏感。
宇野:
あぁ、そうか確かにファミレスとか行くとあんまり食べないですもん、うちの子も。

―子どもを育てる環境としてはどうなんでしょう?

浦田:
羨ましいなと思うのはうちの一番上の娘がね、ともかく虫とか好きでね、どんどん薮とか入って行っちゃっていろんなもの見つけて来ちゃ喜んでる。羨ましいなと思いますよね。最近そんなこと出来るとこ希少でしょう。なんか、うちの娘たちを見ていると楽しそうだよね。

■都市住民へのメッセージ

―最後に、都市部で暮らしている方たちに伝えたいことってありますか。

浦田:
四季の美しさ、四つの季節がすっごい綺麗。雪が溶けたあの春の花なんかも夢のようだよね。
宇野:
私は、子どもを育てているというのもあるんですけども、近所のお年寄りの方のおかげで子どもがしっかり育っているということを伝えたいですね。檀家さんもあるし、ご近所の方もそうですけど今まで全然知らない"よそ者"なのに結構、息子のこと気にかけて下さるんですよ。息子も同年代の友達がいないせいもあって、ご近所のお年寄りの影響を受けて、腰の曲がったおばあさんのマネして歩いてみたりするんですけど…(笑)。そういうとこ見てるとすごく微笑ましくて、しっかりした大人に育つだろうなと。私も周りの人に育ててもらうようなつもりで生活してますね。
リチャード:
東京でのサラリーマン生活と比べると、東京の方が給料は全然いいんですけど、生活はこっちの方が楽しいですよね。東京ではいろんなことに追われていて、あれもこれもしないとって全部時間単位で動いていましたね。でも、こっちに来てからはそういうのが無くなるんです。自分の時間っていうか自分に余裕が出来るから。これ
いいなぁこれ食べたい、じゃあ今度の日曜日に!って出来るんですよね。東京にいたころは時間ばかり気になって思っていても行動できなかった。それが川西町に来て良かったことのひとつですね。あと知り合いをつくることですね。子供と奥さんを呼んでまだ2年しか経ってないんだけれど、知り合いがいなければ、ここで家族とやっていく自信がありませんでした。奥さんと子どもは日本語わからないけれど、知り合いがいれば困ったときに相談できるし、一緒に家族を育ててくれる気がしていました。だから家族を呼んでも大丈夫かなぁと思ったんですよ。

―今日は、食の豊かさに加えて、季節の移ろいや人とのふれあいといった里の暮らしの魅力をたっぷりと聞かせていただきました。みなさん本当にありがとうございました。

浦田・宇野・リチャード:
ありがとうございました。

「里の暮らし」を楽しむために、みなさんのお話に共通するのは、地元の人とコミュニケーションをたくさんとって、気にかけてもらったり相談したりできる関係を築くことの大切さ。実はそのコミュニケーションから地元の人もたくさんのことを学んでいます。そんなお互いにとってプラスになる交流が、今後一層広がっていったら楽しいですね。